【シャンティイ(フランス)27日=川端亮平】名手が勝利へ太鼓判! 凱旋門賞(10月2日、シャンティイ、GI、芝2400メートル)に挑む日本ダービー馬のマカヒキ(栗東・友道康夫厩舎、牡3歳)が、エーグル調教場の芝コースで最終追い切りを行った。ラストは確かな伸びで、堂々と1馬身半先着。フランス出身のクリストフ・ルメール騎手(37)からは「勝てると思う」とV宣言が飛び出した。自身にも、日本馬にとっても初となる“世界一”が近づいた。
まばゆい陽光と世界の報道陣の熱視線を浴びながら、鹿毛の馬体が躍動した。マカヒキが軽快な走りを披露。騎乗したルメール騎手は「勝てると思います」ときっぱり。日本馬初のVへ、明るい希望の光がともった。
広大なエーグル調教場の芝周回コースでの最終追い切りは、8ハロンから帯同馬のマイフリヴァ(牡5、500万下)を2馬身追走してスタート。ラスト1ハロン過ぎに軽く仕掛けられると鋭く反応して、悠々と1馬身半先着だ。
「状態がすごくよくて、筋肉も付いた感じがする。メンバーは強いけど、すごく走る馬だから自信があります」
共同会見では現地メディアから「あまり強い印象を感じなかった」と指摘されたが、鞍上は「ニエル賞(1着)の追い切りより強く追って、それに十分応えてくれている。ミニマムな反応だったけど、準備はできている」と反発。前走からの上昇度と伸びしろの大きさに胸を張った。
前哨戦との違いは、通常より1日早い“火曜追い”にもある。日本では日曜のレースは水曜追いが一般的だ。友道調教師は「ニエル賞のときよりも負荷をかけるので、レースまでの回復期間を1日でも多く取るため」と意図を説明。最終追い切りで速い時計を出さない従来のスタイルは変えず、普段より長い8ハロン(日本では通常6ハロン)から追うことでスイッチを入れた。
ルメール騎手はこれまで凱旋門賞に8回挑戦し、2006年プライドの2着が最高。伏兵馬でディープインパクト(3位入線後に禁止薬物検出で失格)に先着し、確かな腕を示したが、まだVには届いていない。それだけに「僕はフランス人で、凱旋門賞は一番大切なレース。僕もまだ勝っていなくて、僕の人生と、日本の馬の歴史は同じです。だから一緒に勝ちたいと思う」。母国と日本を愛し、昨年からJRAに移籍した名手は悲願にかける思いを重ね合わせる。
「(有力馬が回避し)人気は上がったけど、プレッシャーはないです。マカヒキは乗りやすくて、いいポジションを取れる。今年こそは…」とトーンは高まるばかりだ。
異国の地で進化するマカヒキが、自信満々の鞍上を背に世界の頂点を獲りに行く。
★シャンティイ調教場は東京ドーム80個以上の広さ
調教場はシャンティイ競馬場に隣接しており、その広さは約400万平方メートル(400ヘクタール)と言われ、東京ドームの80個以上に相当する。エーグルは調教コースのひとつで、見た目は森の中の草原。距離の目安となる三角コーンなどが置いてある程度なので、正確な調教タイムは計測しにくい。
★出走馬15頭程度に
第95回凱旋門賞の最初の取り消し手続きが27日に行われ、19頭の登録馬が発表された。このうち、アルマンゾル陣営は回避を表明しているので、今年の出走馬は15頭程度になりそうだ。競馬の大レースに出走するには登録を何度か繰り返すのが一般的だが、フランスのシステムは独特で取り消し手続きを重ねていく。
今年の凱旋門賞は5月の初回登録で115頭いたが、一気に19頭に減った。今後は28日に2度目、29日に3度目の取り消し手続きと同時に追加登録(初回に登録がなかった馬が出走を希望する場合)があり、出走馬が確定。30日に枠順が決まる。出走までに必要な費用は1万8200ユーロ(約207万円)。追加登録の場合は12万ユーロ(約1368万円)。
■展望
本命視されていた8戦無敗の仏2冠牝馬ラクレソニエールが負傷で回避。ダービー馬マカヒキに大きなチャンスが巡ってきた。能力を存分に発揮できる良馬場ならば、日本の悲願を達成する可能性はさらに高くなる。
強敵はポストポンド。ドバイシーマクラシックでドゥラメンテを破り、前走の英インターナショナルSも快勝しており、欧州の古馬ではナンバーワンの存在だ。今年の英愛ダービーを制したハーザンドやヴェルメイユ賞を勝ったレフトハンド、5戦連続GI2着のファウンドなども侮れない。